顎変形症のセカンドオピニオン
矯正治療が終わった方、あるいは今矯正治療中の方でも、矯正相談をしたときや治療方針が決定したときの説明と、イメージが違うということはありませんか。そういう方のために、セカンドオピニオンのご相談も受けております。
ご相談例1
受け口が気になっていて矯正治療を受けて、治療が終わって装置がはずれたときに、思っていた口元と違うのですが、どういうことでしょうか。(20代女性)
受け口の原因が骨格的要因が大きいのにもかかわらず歯のみの矯正治療を選択したためだと考えられます。 骨格的要因が大きい場合は、機能的なことや安定性のことを考えても、上下の骨格のバランスを整える手術を併用した矯正治療をする顎変形症の適応するべきだと考えております。
矯正担当医の中には手術を併用する顎変形症を適応することが患者さんの負担になるから、最初から顎変形症の治療内容の説明をしっかりしない、あるいはあまりお勧めしないという考えの先生もいらっしゃいます。
歯のみの矯正治療の場合、骨格的なズレを歯でなんとかカモフラージュして咬み合わせをつくるため4、5年と治療期間が長くなることがあります。また歯が骨からはみ出すような動かし方をするので、治療が終わった直後はいいのですが、加齢とともに歯肉退縮が起こり歯が長くなったり知覚過敏になったりしてしまうこともあります。もちろん、受け口の方でオトガイが出ている状態に関してはほとんど変化がありません。
矯正治療の検査結果の説明の時に骨格的要因が大きい分析結果がある場合は、顎変形症の矯正治療の内容の説明をしっかり受けた上で、どちら治療を選択するかを決めていただくとよいと思います。また、ご相談者のようにすでに矯正治療が終わっている方も、今から顎変形症の治療に切り替えて治療することが可能な場合があります。ご相談ください。
ご相談例2
あごが曲がっていたので美容外科で手術をしたのですが全然ご飯が食べられません。あごはまっすぐになってはいるのですが、これでは生活できません。(20代男性)
数年前に大学病院勤務時代の初診にいらっしゃった患者さんのご相談内容です。咬み合わせのことをほとんど考えていない治療を受けられたためだと考えられます。
あごが曲がっている方の場合、あごの成長や顎関節の下顎頭の吸収の過程で徐々に曲がってくるため、あごの曲がりに合わせて徐々に歯も噛めるように舌や唇の力で傾いて(「歯性補償dental compensation」といいます)きます。この歯の傾きを改善せずにあごの骨をまっすぐになる位置に移動する手術をすると、咬み合わせが不十分な状態になります。顎変形症の治療は咀嚼機能や発音機能の改善のために咬み合わせをよくする治療です。
骨格的なあごの曲がりが原因である不正咬合は顎変形症(顔面非対称)の治療の対象になります。手術によりあごの骨がまっすぐになるように移動させた直後の状態で上下の歯がしっかりした咬み合わせができるように、手術前の準備として「歯性補償dental compensation」を解除する術前矯正を行います。手術直前になれば多ければ調節するごとに歯型をとり(印象採得)を行い模型をつくって確認を重ね、手術後にしっかり咬める状態になるように微調整を重ねていきます。この術前矯正がしっかり精密にできていると、手術後の骨格的な安定性が高くなり、術後矯正の期間も短縮できます。
骨格的な安定性は、手術前の舌の動きや咬む癖が大きく影響してきます。骨を固定しているチタン製のプレートは指の力で曲がるくらいのもので、咬む力は体重くらいで非常に大きな力であるためです。術前矯正が不十分だと咬合が不安定になるため、噛むたびに曲がっていた位置に戻そうという力が加わり、プレートが曲がってしまう可能性が出てきます。術前矯正を精密にしていると、手術直後に咬合が安定するため噛むたびに移動直後の位置に落ち着くため、3~6ヵ月程度かけてしっかりその位置で骨が固まります。骨格的にも咬み合わせも安定してしている状態であれば、最終的なかみ合わせの微調整のための術後矯正の期間も短くて済みます。
この相談者の方は大学病院の担当医の治療を受けられて現在は快適な生活を送られていると聞きました。患者さんの希望であるあごの曲がりを改善するということを優先させすぎた結果、準備不足なまま先行して手術を行ったために、同じような悩みをお持ちの方の相談を受ける機会が多くなっています。
医療施設によって治療方法やゴールの設定が様々で異なっていますので、特に外科的な手術を行うような場合は、複数の専門医院で説明を受けて納得したところで治療を受けていただくことをお勧めします。