矯正装置の選択基準

矯正装置の選択基準とは?

最近、材料や技術の進歩によって目立たない装置を使って歯を動かすことができるようになり、矯正装置の選択肢がふえてきました。しかし、目立たないというメリットがある反面、症例によって、選択する装置ごとに治療終了時の歯並び咬み合わせが異なってくるということがあり、矯正治療を終えたときに納得し満足のいく結果なかったというセカンドオピニオンの相談を受けることが多くなってきています。それぞれの装置の特徴に関してよく知ったうえで矯正装置を選択する必要があります。

矯正装置の種類と選択基準矯正装置の選択基準とは?

種類1:唇側矯正(表側の矯正)

矯正治療といえば、まず思い浮かぶのがこの装置ではないでしょうか。歯の表面にボタン(ブラケット)を接着剤でつけ、ボタンの溝にワイヤーを固定し、ワイヤーの弾性力を使って歯を移動させたい方向へ力を加え移動させる装置です。

他の装置と比較すると治療期間は短く、費用が低いということだけでなく、幅広い症例に対して治療が可能です。また、ワイヤーの力がしっかり歯根まで伝わるので、一本一本しっかりと並べることができるので、矯正治療後の後戻りが少ない仕上がりで保定に移行することができます。

従来はブラケットが銀色の金属のものしかなく目立ちやすかったのですが、当院では標準的に前歯は透明度の高いものを使用しているため目立ちにくくなっています。ワイヤーも白色にコーティングされているものもあるため目立ちたくないという患者さんの多くはこのワイヤーを選択していただいています。

種類2:裏側矯正(リンガルブラケット)

裏側にブラケットをつけてワイヤーで動かす装置です。他の装置に比べて、表側に装置がついていないため笑っても見えなく、審美性が非常に優れているため、絶対に矯正治療しているのを周りに知られたくない患者さんが選択することが多いです。

前歯の軽度なでこぼこの状態を治療するのに適していますが、ブラケット間同士の距離が短く、歯を動かす力の伝わり方が表側と異なるため、歯を抜いて治療するといった歯の移動距離が大きい場合は、治療期間が長くかかってしまったり、治療の完成度が表側でするより劣る状態で終了したりすることがあるため、唇側矯正で治療した場合での治療結果のご説明に納得していただいた患者さんに選択していただいています。

裏側についているため舌の違和感によるしゃべりにくさや舌の口内炎、歯磨きのしにくさを不便と感じる患者さんもいますが、多くの方はしばらくすると慣れてくるようです。過蓋咬合などかみ合わせが深い患者さんは、上の前歯につけている装置を食事の時に噛んでしまうため、奥歯に仮歯の材料を築盛して咬まないようにします。その場合は特に強く違和感を感じる方もいます。

また、かみ合わせが深くなくても、特に日本人は歯の裏側の形態に関して個人差が大きく既製のブラケットだと外れやすいというリスクがあるため、当院では装置をオーダーメイドで鋳造して作製して接着面が歯面に適合するものを使用するシステム(インコグニト™)を使用しています。オーダーメイドの装置を使用するためコストがかかりますので治療費も高くなります。

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ガイドライン

種類3:マウスピース矯正

正式名称をマウスピース型矯正装置といいます。透明な薄い取り外し式のマウスピース型の矯正装置で歯を動かすシステムです。治療前の歯型の模型から治療終了時の歯並びまでの動きをコンピュータシミュレーションによって模型を作製し、そのステップごとに装置を作製したものを2~3週間から毎に次々に交換して歯を動かしていきます。歯にアタッチメントという白いボタンを付けてしっかり歯根まで動かす力を加えようとしますが、唇側矯正よりは劣るため、抜歯での治療は適応外と判断することが多いです。

選択基準としては軽度の前歯の叢生であったり、かつて矯正治療をしていて、その後戻りであったりする場合は、歯のサイズを調整(歯冠形態修正、ストリッピング)することにより長期安定性の良い状態で治療を終えることができますので、希望される方には非常に良い方法です。治療費は歯を移動させる距離によって作製する装置の数が異なるため、装置の数が少なければ比較的抑えて行うこともできますが、カスタムメイドするため技工代がコストとしてかかりますので唇側矯正より高くなることが多いです。

ガイドライン

当院の考え

医療としての理想の矯正治療のゴールは、保定が終わって何も装置をつけない状態で100点のまま維持できる状態です。しかし必ずしも治療を希望される患者さんがその理想のゴールまで求めているとは限らないと考えています。例えば、85点のゴールの治療方法ですが、治療中の負担(目立つ、期間がかかるなど)が少ない治療方法を希望される患者さんもいらっしゃいます。

いろんな矯正装置があるなかで、それぞれの治療方法にはメリットやデメリットがあり、しっかりとそれを説明して理解していただいたうえで、納得する方法を選択していただくことが重要と考えて、患者さん一人ひとりにあった治療方針をオーダーメイドで立てていきます。

ゴールが85点の治療を選択して治療が終わってから、やっぱり100点を目指したいと希望されることもあります。当院では、しっかり100点の状態にする治療技術を提供するのが医療であるとかんがえ、一度治療が終わっても、最後まで責任をもって治療させていただいています。