矯正の後戻りについて

矯正の後戻りはどのような状態を指しますか?

矯正治療が終わって歯が並んだ状態になったあと、数ヶ月または数年たって元に戻る状態のことです。完全に元に戻らなくても、少しでこぼこになったり、前歯が開咬になってきたりすることが多いです。

矯正後に後戻りしてしまう原因

大きな原因は3つ考えられます。

1. 矯正治療開始前に立てる治療計画が不十分なこと

骨格が問題なのにもかかわらず歯の移動のみに頼って治療を行ったり、歯が並ぶ隙間がないのにスペースを作らずに無理に歯槽骨いっぱいに歯を並べたりする治療計画を立てて治療を行った時に起こります。外科的な手術を併用した矯正治療や抜歯は出来る限り避けたいですが、原因に対する治療を行わないと元に戻ってしまいます。

2. 治療終了時にしっかり歯根まで移動していない状態で保定に入ること

例えば抜歯して矯正治療を行う場合、抜歯したスペースを閉じる時に歯の萌出している部分(歯冠)だけ閉じていても、骨の中の歯根までしっかり近づいていないと、しっかり歯根まで近づけた場合と比べて保定後に元に戻る力が大きく働き、後戻りが起こることになります。

3. 治療後の保定装置(リテーナー)を正しく使用しないこと

治療した歯科医師の保定装置の選択ミスや使用方法の説明不足が大きな原因で、歯根の周りの骨が固まるまでの3.4年の間に治療前の状態に戻ろうとする力に対抗するように、適切に保定装置を使用しないと後戻りが起こります。

後戻りした場合の治療方法

後戻りの原因に対してアプローチする必要があります。
例えばでこぼこな状態に後戻りした場合は顎と歯の大きさのバランスが悪いことが原因であれば、歯冠形態修正(ストリッピング)を行って歯の幅を小さくしたり、必要であれば抜歯も検討します。

歯根までしっかり並んでいない状態が原因であると認められた場合は再度マルチブラケット装置などを装着して歯根も並べるように移動させることにより再度の後戻りを防ぐようにします。

また、前歯で噛みきれなくなってしまうという、開咬の状態に後戻りした場合は、骨格性の不正咬合対して歯のみで矯正したことが原因であれば顎変形症として保険適応の治療も検討します。

治療期間は後戻りの程度や歯の移動量によりますが、ほとんどの場合最初の治療をした期間よりも短い期間ですみます。

後戻りしないようにするために必要なこと

まずは矯正治療を開始するときに後戻りを起こさないような治療方針に従って治療を行うことです。マウスピース矯正装置やマルチブラケットなど装置を外した直後に見た目だけ治る状態をゴールにしてしまうと後戻りを起こす可能性が大きくなります。

保定装置の使用が終了してからも安定する状態を逆算した治療方針を矯正歯科医が提案してくれるかどうか、確認する必要があります。

また、正しく保定装置の使用することも必要です。例えば取り外しの保定装置を使用する場合、目安として最初の一年間は食事以外は寝ている時も一日中装着して、次の一年間は夜寝るときだけ、さらに次の一年間は週に一日寝るときに装着します。

厳密にいうと、装置を外してから次に装着するときに、装置がきつくないという状態を保ちながら外す時間を長くしていくと、後戻りせずに保定装置を卒業することができます。

矯正の後戻りを治療した症例

部分矯正(下顎前歯部叢生あともどり)52歳、女性
主訴 20代の時に矯正治療をしたが下の前歯が凸凹になってきて治したい
検査 セファログラム分析より下顎の後方位および下顎前歯の舌側傾斜が認められた。模型分析より下顎歯列弓幅径の狭窄が認められた。
治療計画 過蓋咬合であるが主訴の改善を目的とした治療方針を立てた。下顎前歯から小臼歯部にマルチブラケット装置を装着し、叢生の改善および排列を行う。
経過 5か月でマルチブラケット装置を撤去し、保定を開始した。現在保定中であるが咬合は安定している。

開始

開始時

開始時

治療開始

開始後6ヵ月

開始後6ヵ月

1か月後

開始後9ヵ月

開始後9ヵ月

5か月後

開始後1年8ヵ月

開始後1年8ヵ月